【妄想官能物語】背徳の甘い罠 3-3 誘われる心

第三話「囁く罪」

章「誘われる心」

スマホの画面を見つめたまま、私は息を呑んだ。

「……今度、いつ会える?」

そう送ったくせに、翔からの返信が届くのが怖かった。

送信した直後から、心臓が早鐘のように鳴っている。

ダメだったのに。

あの夜、すべてを終わらせるべきだったのに。

夫の隣で眠るはずの夜に、私は別の男の言葉を待っている。

それがどれほど愚かなことか、痛いほど分かっていた。

なのに、指先はスマホを手放せない。

画面に光が灯る。

翔:「明日の夜、会えるか?」

それだけの短いメッセージが、胸の奥に突き刺さった。

「由梨、おはよう。」

夫の穏やかな声に、私ははっと我に返る。

「……おはよう。」

いつも通りの朝食。
夫が淹れたコーヒーの香り。
窓から差し込む優しい朝日。

変わらないはずの風景の中で、私だけが別の世界にいる気がした。

「今日、仕事早く終わる?」

「うん……たぶん。」

「じゃあ、夜ご飯一緒に食べようか。」

「……」

ほんの一瞬、言葉に詰まる。

「どうした?」

「ううん、ちょっと仕事の予定が……分からなくて。」

また、嘘をついた。

夫の優しい微笑みが、どうしようもなく胸に刺さる。

私はもう、翔に会うつもりでいる。

その事実に、気づかないふりをした。

仕事を終えて、私はいつものバーへ向かった。

「……よく来たな。」

カウンターの奥、私を待っていたのは翔だった。

相変わらず黒のシャツが似合う男。

私が現れた瞬間、彼は満足そうに微笑んだ。

「仕事、忙しかった?」

「……まあね。」

「じゃあ、今夜はゆっくりできる?」

彼の問いに、私は黙ったままグラスを傾けた。

ワインの赤が、まるで私の罪の色のように映る。

「……由梨?」

「……翔の好きにして。」

その言葉を口にした瞬間、私はもう戻れないと知った。


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